髪の毛を「生やす」のではなく頭皮に「植える」植毛。
この植毛には大きく2種類あり、人工毛植毛と自毛植毛に分かれます。
人工毛植毛(じんこうもう しょくもう)とは、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維で作った人工の髪の毛を頭皮に植え込む増毛法のことで、自毛植毛(じもう しょくもう)は自分の髪の毛を毛根ごと移植することを言います。
人工毛植毛は、1980年代まで盛んに行なわれておりましたが、頭皮の炎症や副作用などリスクが高いこと、また「自毛植毛」の技術が発展したことにより、今では「自毛植毛」が主流となっております。
今回は、この「自毛植毛」のメリット・デメリットについて、解説してまいります。
自毛植毛とは
冒頭でも簡単にお伝えしましたが、自毛植毛とは「自分の髪の毛」を毛根ごと採取して、禿げている部分に移植する手術のことを言います。
育毛や発毛に比べ費用は高額ですが、移植して生着した髪の毛は半永久的に生え続けるため、人気の高い治療法となっております。
当サイトで度々紹介している「日本皮膚科学会ガイドライン」においても、B判定(自毛植毛術を行うよう勧める)の評価を得ており、フィナステリドなどの内服薬や、ミノキシジルなどの外用薬で効果を得られなかった患者に適した治療法と言えます。
自毛植毛のメリット
ここでは、自毛植毛のメリットを「人工毛植毛」と比較して紹介したいと思います。
自毛植毛の主なメリットは下記の3つです。
移植後の拒絶反応が起こりにくい
従来の植毛は、人工的に作った髪の毛を頭皮に植え付けるというものでした。
そのため、頭皮がその髪の毛を「異物」と判断することもあり、拒絶反応を起こして「感染症」を引き起こすというリスクが付きまとっていました。
現にアメリカでは人工毛植毛を禁止しており、前述の日本皮膚科学会ガイドラインでもD判定(人工毛植毛術を行うべきでない)の評価が下されております。
一方、自毛植毛は、自分の髪の毛をハゲている部分に移植するため、拒絶反応が起こりにくく「安全な治療法」と言えます。
施術方法にもよりますが、自毛植毛は「炎症」や「赤み」も出にくいので、手術後は日帰りで帰ることができるのもメリットの一つです。
メンテナンスの必要がない
自毛植毛は、一度生着すると半永久的に生え続けるため、術後のメンテナンスが必要ありません。
生着とは、移植した毛根から実際に髪の毛が生えてくることを言い、自毛植毛の場合は生着率80%~95%もあります。
人工毛植毛は年に1~2回の定期的なメンテナンスが必要であり、また抜ければ再度埋め直さなければなりませんが、自毛植毛は一度の手術でお悩みを解決することができるため、長期的に考えると非常に効率が良い治療法だと言えます。
自然な仕上がりを実現できる
自毛植毛の最大のメリットは、とにかく仕上がりが自然だということ。
植毛した毛根が完全に生着すれば、正常なヘアサイクルとなって髪の毛が生えてきますので、違和感を与えることなく薄毛を改善することが可能です。
毛の長さがずっと変わらない人工の髪の毛とは違い、自然な仕上がりを実現できるのは「自毛植毛」の最大のメリットだと言えます。
自毛植毛のデメリット
ここからは「自毛植毛」のデメリットについて解説したいと思います。
自毛植毛のデメリットをしっかりと理解した上で、どの治療法を選択するかご判断ください。
薄毛の進行具合によっては自毛植毛できない
前述の通り、自毛植毛は密度が多いエリアの髪の毛を、ハゲているエリアに引っ越しさせる治療法です。
そのため、薄毛の進行具合によっては自毛植毛できないケースがあります。
AGAで悩む大半の方は、前頭部(生え際)もしくは頭頂部(頭のてっぺん)から薄毛が進行していきますが、実は「ハゲにくいエリア」も存在し、それが後頭部と側頭部になります。
これは、後頭部と側頭部にある毛根が、薄毛の原因である「男性ホルモン」の影響を受けにくいからで、そのことからも自毛植毛では主に後頭部の毛根を利用しています。
しかし、薄毛が頭皮全体に進行していたり、移植先の薄毛エリアが広範囲にわたっている場合は、髪の毛不足に陥ってしまい自毛植毛が出来ない可能性があるのです。
一方、人工毛植毛は数に上限がないため、これらの心配をする必要はありません。
「植毛できる数に限りがある」という点は、自毛植毛のデメリットだと言えます。
施術によっては後頭部を刈り上げる必要がある
自毛植毛は、AGAの影響を受けにくい後頭部の髪の毛を利用することは前述した通りですが、この施術を行なうには後頭部を刈り上げる必要があります。
そのため、一定期間は「ヘアシート」を貼ったり「帽子」を被ったりしなければなりません。
しかし、クリニックによっては後頭部を刈り上げずに毛根を採取する治療法も存在しますので、どうしても刈り上げを避けたい方はそちらを利用すると良いでしょう。
最大限の効果を感じるまでに時間がかかる
植毛は、ハゲている部分に髪の毛を植え付ける治療法なので、一見効果が直ぐにあらわれるように思えます。
しかし自毛植毛の場合、植え付けた髪の毛は環境の変化により一ヶ月程度で一度抜け落ちてしまうのです。
これはヘアサイクルを正常に戻す働きのため心配する必要はありませんが、生着してから再び生えてくるまである程度の期間を要することは、ひとつのデメリットだと言えるでしょう。
他の治療法に比べ費用が高い
自毛植毛の一番のデメリットは、他の治療法に比べて費用が高いことです。
AGA(男性型脱毛症)は、生命に関わる病気ではないため「自由診療」となり、かつ自毛植毛は「外科手術」に該当するため、費用が高額になります。
クリニックによって治療法が異なり、また個人によって植毛する本数も異なるため一概には言えませんが、50万円~100万円以上がひとつの目安です。
ただし手術は一度きりで、生着後のメンテナンスは必要ないため、トータルで考えれば非常に効率的な治療法と言えるでしょう。
おわりに
以上が、自毛植毛の「メリット」と「デメリット」になります。
自毛植毛は薄毛の症状を高確率で改善でき、また継続治療が必要ないため当サイト的にもおすすめできる治療法です。
しかし、治療費は決して安いものではありません。
日本皮膚科学会ガイドラインでも提唱されているように、まずは「フィナステリド」や「ミノキシジル」といった治療薬を試してみて、効果があらわれなかった場合に「自毛植毛」に挑戦するといった流れが良いでしょう。
もちろん、資金に余裕がある方は初めから自毛植毛の方が効率は良いですが、そちらを含め一度直接医師に相談してみることをおすすめします。
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